タイの釣り思い出シリーズ「カンチャナブリ釣行」③ 2015年12月〜2016年1月/油売り

神奈川県箱根町で育ち、中学~大学のころは芦ノ湖のブラックバスやマスたちと戯れる。その後、伊豆七島方面でカジキのトローリングにはまり、30代後半で南国タイへ。そこで出会った淡水の雷魚やナマズ、海ではアジと戯れる現在・・・

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まずはこちらからご覧ください(^^)

「カンチャナブリ釣行」①

「カンチャナブリ釣行」②

 

⑥ 迫り来る闇と寒さ

※この章は写真がありません。そんな余裕などなかったのです。

 

(油売りの回想から)

少し長めに休憩して、4時20分にテラスを再スタートしました。

20~25分休まず歩き、5分休憩と言うペースを続けることができるようになりました。

 

油売り「あと20~30分ぐらいかな?」

M「そうだね。」

油売り「よし、行こうか!」

 

持っていた水も残り少なくなっていたのですが、ある程度先が見えて来たので心に余裕が芽生えます。

「到着したらファンタオレンジ飲めるぞ~!」と妄想しながら足を前へ出していきます。まだまだ軽やかとは言えませんけどね。

そろそろ車を停めたあたりに出るかと思った頃、M君が慌て出しました。

M「道を間違えた。ここじゃない。」

 

M君はここには何度か来たことはあるのですが、一人で帰るのは今回が初めだと言うことです。それでも私は彼を信頼するしかありません。

 

M「道探してくるから、ここで待っていてくれ。」

M君は持っていたトランシーバーを私に渡して、正しい道を探しに行きました。

さすがだと思ったのは、大きな葉を何枚かちぎって、三叉路などの要所々々に目印として置いて行くのです。これなら正しい道を見つけて、すぐに私のいるところに戻って来てくれるでしょう。

時に18時15分。

 

私はT字路に座り込み、彼が帰って来るのを待つしかありません。

で、また暇になったので寝ることにしました。(後から八ちゃんに、その状況で良く寝れますねと言われました。)

うつらうつらして、目が覚めたら19時近い時間です。周りはすっかり闇に覆われ、気温も下がって来ています。寒くて目が覚めたようです。

ピクニック気分で来てしまったので、ウィンドブレーカーもライターも車に置いてきてしまいました。煙草を吸う人ならライターは持ち歩いているのでしょうけどね・・・。

私は煙草を吸わないんです・・・。

 

とにかく私にできることは動かないこと。誰かが来るのを待つしかないのです。
・・・私はバンコクに帰れるのだろうか・・・。

 

真の闇とはこう言う物なのですね。すぐ横に置いている勇者の杖も見えなくなりました。

空に星が見え始めましたが、月明かりはありません。辛うじて時計の針の蛍光塗料がうっすらと光っているので時間だけは分かります。

この暗さではM君が戻って来ることはあり得なそうです。彼が懐中電灯も、ライターも持っていないのは確認済みなのですから。

彼が無事に正しい道を見つけて川まで行っていたメンバーと合流出来れば、一緒に探しに来てくれるはずです。

M君も戻れていなければ、それはそれで捜索に来てくれるはずでしょうから、とにかく人工の光に注意しながら待つしかありません。

 

そのうちに青っぽい光が見えました。救助が来たかと思ったのですが、光ったところは人が歩けるような道はなかったはずです。そのうちその光はフワフワと動いて、数も増えて来ました。

何と元旦なのに蛍です。

幻想的で、この世の物とは思えませんでした。

フワフワ、ス~ッと光がいくつも動いています。しばらく見とれていましたが、蛍が私を車まで導いてくれる訳もないですね。

 

トランシーバーからは何の呼びかけもないですが、そろそろ川まで行った釣行隊が車に戻って来てもおかしくない時間です。こちらから呼びかけてみることにしました。

「ハロー、ハロー!」・・・・「ザザザッ・・・XXXX ザザザッ」

かすかですが、人の声が聞こえます。

 

「ハロー、ハロー!」再度呼びかけてみます。

「聞こ・・ます。聞・え・・す。」途切れがちではありますが、MEK君の声に間違いありません。

 

「こちら油売りです。コウちゃんはそばにいますか?変われますか?」

しばらく間が空きコウちゃんが出てくれました。

「油売りさん、今どんな状況?」

徐々に、声がクリアになって来ています。

私がT字路にいること、50mぐらい離れたところにアリ塚があることなど、まわりの状況を知らせますと、

「たぶん近くにいる。」

と返事が返ってきました。

 

まだ多少聞こえにくかったのでタイ語でMEK君と直接話すよりも、日本語でコウちゃんに話し、コウちゃんがタイ語でガイド達に伝えてくれる方法にしたことがうまく行ったようです。

 

しばらくしますと、トランシーバーからではなく「フォー、フォーッ!」と肉声が聞こえてきます。私も同じように「フォー、フォーッ!」と返します。

「フォー、フォーッ!」

「フォー、フォーッ!」

「フォー、フォーッ!」

「フォー、フォーッ!」

だんだん声が大きくなり近づいて来ているのが分かります。

 

そして、明らかに人工の光とわかる明かりが見えて来ました。

最初は一つ、そしてもう一つ、またもう一つ、全部で4つの光が見えた時には直接話ができるぐらいの距離になっていました。

痛い足を引きずりながら、彼らの方へ向かいます。ハッちゃんが駆け寄って来てハグしてくれました。

こうして、私は寒い暗闇から救出されたのです。

 

時間はまだ20時30分ごろ(さすがにこの時は時計を見る余裕はありませんでした。)、振り返ればプチ遭難でありましたが、一歩間違っていたらと思うとぞっとします。

そして、まだ問題は全て解決した訳ではないのです。

彼らはM君と出会っていなかったのです。

 

M君はどこへ? 続きは次ページへ

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